謹 賀 新 年
2023年が皆様にとって健やかで歓びの多い1年でありますよう、お祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
生活様式の変化がもたらしたこと
2019年末から始まった新型コロナ感染が人々の生活を大きく変えました。
2023年の現在、大きな変化の波に適応中の私たち。
マスク生活もある意味当たり前になり、新しい生活様式にも慣れてきた感があります。
3年前の感染に対して気にせずにすんだ生活、人との距離感を懐かしむこともあります。
とはいえ、それまでの生活に戻ることはありません。時間が戻ることはないのです。
ウイルスからの脅威に負けないように抵抗するこ中で生まれた社会的環境。
働き方も様変わりし、自宅勤務が当たり前になったように、かつて改善すべきところが一気に遂行されたという面もあります。
外に出ずに買い物も、食事手配も、医療や生活全般のその他のサービスも、ほとんどネットで完結する便利な社会環境に。
十数年かかって起こるはずの進化が、この2年超の期間で進められ実施されました。
開放するための、自分なりの方法を
さて、大変化の波に乗って、というより「流されて」進化のプロセスをたどっては来たけれど、
思った以上に負担がかかっていることに気づく人も多いのではないでしょうか。
なによりも「人との距離」を取らなくてはいけなかった1,2年。
ネットでのつながりが温かくも感じるほど依存しなくてはいけない状態でした。
便利になったと感じる分、人の体温を感じづらい時代にもなったと言えます。
日本財団の2021年の調査では若い世代『18歳意識調査』では半数以上が閉塞感を感じているとの結果が出ました。
さらに科学技術振興機構(JST) <特定非営利活動法人 あなたのいばしょ>での調査によると:
孤独感のある人は、それを感じない人に比べて、うつ症状や不安障害を抱える傾向が5倍になるという報告があります。世代に関係なく、コロナで生活に困窮したなどの原因によって閉塞感を感じているという結果も出ています。
閉じないようにする打開策
いったん閉塞感を感じると、それを打破するのはなかなか難しく、
しかも経済的な面、複雑な諸事情が絡むと一朝一夕に打開することは困難を極めると予想されます。
生活そのものに支障をきたすだけでなく、人の命にまで影響する恐れもあります。
少なくてもそのようなメンタル状態を遠ざける予防線をはっておくための日々の小さなチャージは大切です。
入り込んでしまったループから逃れるための自分なりの解決法を日ごろから考えたり、実践していると開放されるチャンスは多くなってきます。日頃からそのヒントをもっておくことが、自分のなかのレジリエンスを高めてくれるのです。
その思考のループからいったん逃げる助けになるのが「食事」、「運動」、「睡眠」。
当たり前と思いきや、この3つをしっかりとすることで心とからだに変化が生まれます。
そもそも心配や不安が多い、年をとりうまく睡眠がとれない方も多いでしょう。睡眠がとれないとからだもだるく、頭もうまく回転しません。
そうなるとまた不安を感じてしまうというループの繰り返し。
自分の心地よさを自分でつくる
心で受け止めたことは、からだの反応にも表れます。
頭で心地よさを感じるとき、からだも同じように心地よいと感じる。
脳の中でいつもの思考のパターンと異なる部位が活発になります。運動中にほかのことを考えていたら、けがをしかねません。
そういう別の脳の使い方をしてみるのも必要かもしれません。
なにも考えずに、からだを動かしてみる。意外な効果が表れる可能性は高いのです。運動したあと、軽い疲れとともに、なんとなく爽快感を得られるのを経験した方は多いと思います。
また運動することで、エネルギーが消費され疲れて「眠り」に導かれることも考えられます。
自分にとっての心地よさは自分が一番わかっている、もしくは自分でしか感じえないところです。
だからこそ、その感覚を大切にして「自分の居心地のよい」ことを自分のためにしてあげられる環境づくりが大事になってくるのです。
からだを休め、気持ちをしずめ、力を蓄える
からだはあなたの魂(精神)の「神殿」と言われています。からだ(神殿)をよい状態に保つことで、精神がよい状態になるというわけです。これは逆もまたしかり、かもしれません。 脳はすべてをコントロールする司令塔であり、寝ている間に脳が得た情報を整理し、老廃物を排出しています。 それが睡眠時にされていること。この時間をとれない日が続くと、どうなるか容易に推察できますね。
感覚を磨く
オンラインで事が足りることが増えました。
時間の短縮にも感染防止策にもなり、とても便利な環境になりました。
一方で、公共の場や人の多いところでは、まだマスク着用の機会は圧倒的に多いですし、寒い時期であればなおさら風邪の予防に着用することになります。
(以前、「マスクが覆うのは鼻だけではない」というコラムを記載しました。2021年にもすでに危惧されていたことです。)
日本では以前から花粉症の影響などもあり、マスクにことさら違和感を覚えることが少なかったとはいえ、
やはり呼吸しづらく、何よりも人の表情がわかりません。
家で過ごす時間やオンラインでの仕事・買い物・会話などが一気に増えたこととあいまって、ヒトという生物的な活動も変化したように思えます。
マスク以外の部分の表情を読み取ったり(視覚)
風や外のにおいを感じたり(嗅覚)
人や場の感触を感じたり(触覚)
外の刺激、自然音を感じる(聴覚)
などを総動員して感じ取っていた生物としての生きるすべとしての感覚器であったはず。
一気に加速したAIやSNSのシェアを通して、経験しなくても「まるで経験をしたかのような」気持ちになり、さらにそれらに依存する機会が増えてしまっています。
感染とは別の次元で、これからのヒトとしての未来が気になります。
使うことで磨かれていく
使わないものは、その機能を失っていく。
家も人が住まなければ荒れてしまい、使わない感覚器は鈍っていきます。
人としていろんな感覚を楽しめることで、人生は豊かになり、「自分らしさ」を実感できるのです。
感覚を磨くことで、受け取るものに広がりや深みが生まれます。
たとえば「ぬくもり」。
たんに温度を表す言葉ではなく、「気配」や「やさしさ」を感じさせるものです。それは皮膚が温度を感じるだけでなく、皮膚の備わるセンサーがいろいろな情報を脳に伝達し、視覚や聴覚、嗅覚なども併せて総合的に「ぬくもり」として感じるのです。つまり全身で、温かさを感じるのです。
距離感が難しいからこそ、どうしたらそのぬくもり感や心地良さを伝えることができるだろう。その大切な感覚を、こんな時期だからこそ生かせるようにしていきたい。
美味しさ、温かさ、よい音楽、心落ち着く香り、見るだけで楽しませてくれるなにか。
ただ受け身では感覚は鈍っていきますし、AI機能によってさらに「感じる」ことが減っていきます。
感覚を研ぎ澄ます、というのはやはり常に使って経験値をふやしていかないことにはなしえないことです。
嗅覚を生かす
私たちに備わっている五感は、生物として「命」を守るためのものです。
そして同時に人生の「歓び」に触れてを感じる部分です。
匂いを感じる嗅覚の研究は視覚や聴覚より後を走っていると言われます。
2004年にアメリカのバック、アクセル両博士が「匂いの受容体と嗅覚のメカニズムの研究」でノーベル医学生理学賞を受賞したことで、一般にも広く「記憶と香り」についても知られることとなりました。日本では香道もあることからわかるように、香りに敏感だと言われてきました。研究も数多くなされてきたと思うのですが、嗅覚分野で誰もが知るノーベル賞を得られたことで、嗅覚への関心も一気にヒートアップしたようです。
今後、認知機能への香りの作用などもさらならる研究開発が進んでいくでしょう。また香りで心理的な効果を上げる研究もさらに深められています。
私たちも、AI時代にもっと大切になるだろう「人の感覚」を大切にしたいと考えています。
そして人生を豊かにしてくれる香りの可能性を、皆さんとともにたくさん共有し、
2023年、感じる部分を衰えさせない、楽しむを感じる「センサー」をもっともっと磨いていけるお手伝いをしていけたら嬉しいです。