天然の香りの力でゴキゲンに
香りは脳にはたらきかける
ある種の香りが特定の記憶と結びついているという経験は誰でもあると思います。
タンスの防虫剤のにおいとおばあちゃんの家…
秋の金木犀の香りと楽しかった旅行の思い出…
私たちは五感(嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚)を通じて自分の外側の環境と関わります。
中でも嗅覚は、12対ある脳神経のうちの1番目、第Ⅰ脳神経である嗅神経を通って、情動を司る扁桃体や記憶を司る海馬などに伝わり、情動や記憶に働きかけ、私たちに喜びや心地よさをもたらします。
科学の父ともよばれるレオナルド・ダ・ヴィンチは「香りという無限の組み合わせを感じる嗅覚というものは、動物をそれ自体で喜ばすものである」という言葉を残したと言われていますが、お気に入りの香りで私たちの気分がリラックスしたり、気持ちがリフレッシュしたりするのは香りが脳にはたらきかけるからなのです。
不安やイライラにもアロマを
情動とは、敵が近づいてきたらおびえ、戦って敵を倒さなければならないという動物的、衝動的な感情のことで、生きていくための原始的な機能です。情動を主に司る脳の扁桃体は人間脳とも呼ばれる大脳皮質と密に連携して人間らしい心、感情を作り出すと言われています。
現代を生きる私たちにとっては他者と協力して生きていくことが大切であり、情動が必要以上に暴走して不安やイライラが高まることは好ましくありません。
お気に入りの香りで不安やイライラが落ち着くのは、香りが嗅神経を伝わり、扁桃体の暴走を防いでいるからだと考えられています。
心地よい睡眠もお気に入りの香りから
毎日を元気に活動的に過ごしたいと願っても、睡眠の質が低下することで日中のパフォーマンスが低下します。日中、集中力高く、ゴキゲンに過ごすためには良質な睡眠が欠かせませんが、現代人にとって質の高い睡眠をとることは難しくなっています。近年ますます睡眠の重要性について説かれ多くの研究発表がなされていることからもわかるように、睡眠は心身の健康にとって欠かせないものです。香りの作用として入眠導入、睡眠の質改善などの研究と報告も世界各国中で増加しているようです。実際、私も枕元にラベンダーのアイピローを置いていますが、毎晩、とてもよく眠れます。しっかりと眠ることで、翌朝のモチベーションも変わってくるのです。。
皆さんも毎日の生活を気分よく「ゴキゲン」に過ごす手立てのひとつとして、香りの力で日々のセルフケアをされてみてはいかがでしょうか。
上谷実礼氏 プロフィール
千葉大学医学部医学科卒業
ヒューマンハピネス株式会社代表アドラー心理学講師・心理カウンセラー
千葉大学大学院医学研究院非常勤講師
・医学博士、産業医・労働衛生コンサルタント
・日本産業衛生学会、日本アドラー心理学会、日本ゲシュタルト療法学会
『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(2020年3月出版)ほか、保健指導や看護・専門職向けの勇気づけのミレイ先生シリーズが高い評価と人気を得ている。