本年もどうぞよろしくお願いいたします
香りと、人とAIと
オリンピックが日本で開催される、ある意味大きな節目の年が幕を開けました。
世界の情勢も環境も刻刻と変化していくのを感じながら、日々の生活を積み重ねている私達は、この大きなうねりにどう乗っていくのでしょうか。
胸躍る部分と心配な部分とが相まって、少し複雑な気持ちをいだいている方もいるかもしれません。
そう、いろいろな事が急速に進化して、けん引する側と、ついていく側にも隔たりができていることが一つの要因なのでしょう。
先日Googleが画像診断で、AIシステムが専門家より高い精度で病気の前兆を検出できたとの調査結果を発表しました。AIの進歩は目を見張るもので、人の五感の領域にも容易に到達できる勢いです。部分的には、もう人の感覚に頼らずにAIが判断して処理している部分も多々あります。
このままいくと、もしやAIにすべて委ねる時代がくるかもしれない、という不安は脇に置いておいて、蓄積されるデータによって高い分析や精度が社会にもたらす恩恵は計り知れません。
視覚、聴覚はVR（ Virtual Reality)においてすでに技術的にも開発が成熟しているとされており、これからは体性感覚の伝送＝触覚、嗅覚、そして最後に残るのが味覚ともいわれています。
香りは記憶や感情と結びついているのはご存じの方も多いかもしれません。
そこから香りによるお客様へのアプローチということで、たくさんの香りマーケティング市場も広がっているのですが、この再現の難しい香りすらも、やがて伝送して香りを楽しむことのできる時代が目前に迫っており、さらに言うと「将来AIや独自の新技術開発の発展から生まれた新規な人工的嗅覚センサ・人口ニューラルネットワーク（神経ネットワーク）系や香りビジネスによる成果などにおいて、整体の嗅覚機能や処理システムの能力を超える可能性も出てくるのではないかと考えられる」（Journal of Aroma Science Technology and Safety “AROMA RESERCH” 2019 vol.20/04 編集委員長 工学博士 外池光雄氏)
近い将来、
こんな状況のときには「こんな香り」
今の心理状態であれば「このブレンド、レシピは〇〇と△△と・・・」
さらに必要アイテムさえあれば、その場で香りも伝送されるかもしれません。
たしかに便利ですが、
感情やその場に現れる空気感、インタラクティブな感情を交えた精油の選択は、
まだまだ人間に任せてほしいなと思います。
余談ですが、嗅覚がとくに優れているベテランの調香師は、香りをかいでも脳の活動する部位が異なるのだそうです。熟練された調香師は、香りそのものの分析というよりも、もっと別の次元で香りを創作していると言えるのかもしれません。そのあたりは人間のなせる技ではないかと信じています。
また人のぬくもりは、やはりAIではカバーできない部分。ぬくもりは、何も手だけではありません。目を見て、微笑んで、温かさを感じて、声のトーンを敏感にキャッチする、香りはなにも嗅覚だけの要素で成り立っているわけではありません。
アロマセラピーの香りは、スペースによっても個人によっても感じ方、
とらえ方は様々です。そこに人が入ることで、よりいっそう香りが、香り以上のなにかに変化して、私たちを喜ばせるのだと思います。
香のある日常を、今年もまた。
本年が皆様にとって素晴らしい1年となりますように。
